研究課題/領域番号 |
15208019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 克 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (20155170)
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研究分担者 |
中坊 徹次 京都大学, 総合博物館, 教授 (20164270)
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
中山 耕至 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助手 (50324661)
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60324662)
上田 拓史 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00128472)
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キーワード | 有明海 / 筑後川河口域 / スズキ / 特産魚 / 炭素安定同位体 / 回遊履歴 / 食性 / 低塩分汽水域 |
研究概要 |
2004年4月から2005年3月まで、各月1〜2回の定点調査を行い、得られた試料を分析し、以下の知見を得た。 1)有明海筑後川河口域〜河川下流域に設けた従来の7定点に加えて、新たに上流側の淡水域に3定点を設け、合計10定点において稚魚網による仔稚魚の採集を行った。これらの毎月1〜2回の定点調査に加え、河口点から上流側15kmと下流側3kmの定点において、繁網によるスズキ当歳魚を採集(4月〜10月)した。得られたスズキの筋肉及び肝臓の炭素安定同位対比を測定した。 2)上記10定点で採集されたスズキの胃内容物を詳しく調べ、体長17mm前後までは各種の沿岸性かいあし類を、17mmから40mmまでは低塩分汽水性かいあし類Sinocalanus sinensisを、40mmから100mm前後まではツノナガハマアミを、それ以上はアキアミを主食とすることを明らかにした。これら4群の炭素安定同位対比が生息塩分環境に対応して有意に異なることを確認した。 3)上記の結果と前年度に飼育実験により測定した濃縮係数より、スズキは海から淡水域へ、淡水域から汽水域へと回遊する様相が確認され、特にこれまで不明であった汽水域への依存度が極めて高いことが明らかとなった。 4)1990年から1999年の10年間に集積されたスズキ仔稚魚の採集量と各種物理環境との関係について分析した結果、スズキ仔稚魚の河川遡上量と3月の降水量の間には負の相関があると推定された。 5)以上の他に、有明海特産魚類仔稚魚の必須の餌であるS.sinensisのデトリタス依存性や分布特性、スズキに寄生するかいあし類、エツの卵から仔稚魚期における生残過程、ワラスボの成長に伴う眼の退化過程などについての分析を行い、新たな知見を得た。
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