研究課題
基盤研究(A)
初年度に当たる今年度は以下の3つの分野において研究を進めた。第一は、東アジアにおける農産物貿易に関するデータベースの構築である。日本、中国、韓国、台湾を対象として、農業統計、貿易統計等を収集整理し、農産物の関税率、国内生産、相互の貿易量・金額等のデータベースを作成し、東アジア農業の基本条件を明らかにした。第二は、東アジア農業の基本問題の実態把握である。実態把握のための現地調査を、中国、韓国、台湾において実施した。第三は、農産物をめぐる競争条件と協調条件を探る上での論点の解明である。各国の当該分野の専門家による研究報告とそれに基づく討議を行い、以下の主要な論点を提示した。1.各国の共通点と相違点。各国とも一人当たり耕地面積が極めて小さく、FTAの進展の中で農業先進国からの市場開放を強く求められている点で共通している。日本は農地の荒廃や農業労働力の高齢化等の様々な問題を抱えているものの、農業政策の改革によって新しい展開ができること。韓国は後継者不足や国際的に見て高関税品目を多く抱えている等日本と共通する部分が多いが、専業農家率が高く、水稲への所得依存率が高い等の異なる条件を持つこと。中国は膨大な農村人口を抱えており、都市住民との間の所得格差問題、経済発展に伴い増加する土地収用への補償問題が課題となっている。2.WTO農業交渉における問題点。中国がWTOで存在感を増していること。日本と韓国では高率関税への上限導入が与える影響が大きすぎること。農業の多面的機能についての分析が必要であること。農業生産減少下での調和の取れたFTAの実現が必要であること。3.農政改革の可能性。とくに日本の農政改革の内容について、ヨーロッパ並みの経営を東アジアにおいて実現することの困難性が指摘された。4.各国に特有の問題への配慮。日本と韓国は環境問題、中国では貧困問題についての配慮が必要であること。
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