研究概要 |
本年度得られた結果を以下に示す。 1.家兎骨格筋から単離した、α-アクチニン及びトロポニン複合体の超高圧処理による構造変化をCD,蛍光スペクトルにより測定した結果、α-アクチニンのヘリックス構造は処理圧力が高くなるにつれて常圧時の60%から40%までに低下し、この変化は不可逆的であることを明らかにした。α-アクチニンの持つ超沈殿促進効果も200MPa以上の処理圧力になると失われていくことが明らかになった。トロポニン複合体の圧力による構造変化は小さく、4次構造の一部に不可逆的変化が認められた。また、Ca^<2+>非存在下での合成アクトミオシンATPase阻害能は400MPa以上の圧力により除々に失われた。 2.筋肉内在性リソソーム系タンパク質分解酵素の圧力による局在性の変化を低温熟成の場合と比較しながら検討した結果、処理圧力の増加とともにリソソーム膜の脆弱化によりカテプシン系酵素(B,D,H,L)の膜外への溶出が認められ、カテプシンDの溶出と筋肉組織への拡散の様子が免疫電顕により確認された。短時間(5分間)の圧力処理による変化は、21日間熟成させた場合と同等、またはそれ以上の変化をもたらした。 3.圧力処理した筋肉及び筋肉から単離したコラーゲンのShear valueを測定した結果、圧力は筋原線維だけではなくコラーゲン線維にも影響を及ぼし、いずれもが圧力による食肉の軟化要因であることを明らかにした 4.牛肉アレルギー患者血清中の、IgEをヒト好塩基球培養細胞(KU812F)に結合させ、圧力処理したウシ血清アルブミン(BSA、牛肉アレルゲンの一つ)で感作してヒスタミン遊離試験によりアレルゲン性の強さを測定した結果、処理圧力の増加につれてヒスタミンの遊離量が低下する、すなわち、アレルゲン性が低下することを明らかにした。
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