研究概要 |
筋肉内在性酵素に焦点をあてながら、超高圧処理による筋肉タンパク質の制御を研究した。また、食肉アレルゲン性の低減化や、呈味物質生成に関与する酵素への影響についても検討した。 1.トロポミオシンおよびα-アクチニンに及ぼす影響 (1)α-アクチニンのヘリックス含量は処理圧力が増加するにつれて60%から40%に低下したがトロポミオシンは圧力に対して抵抗性を示した,(2)圧力によるα-アクチニンの構造変化は300MPaまでは可逆的であったが、それ以上の圧力になると不可逆的なものとなった,(3)α-アクチニンの超沈殿誘起能はATPアーゼ促進能よりもアクチンゲル化能と相関を示した。 2.高圧と熱の併用効果 (1)高圧と熱の併用は硬い肉の軟化に有効であった,(2)剪断力価は筋肉内結合組織と筋原線維の変形に何らかの関係を持っているかもしれない。 3.筋肉内結合組織に及ぼす影響 (1)筋線維だけでなく結合組織も超高圧処理によって柔らかくなった,(2)圧力依存性の筋肉内コラーゲンの熱安定性の低下と構造の脆弱化が認められた。 4.筋肉内在性タンパク質分解酵素に及ぼす影響 (1)超高圧処理はプロテアソームの活性化を引き起こし、3次構造の不可逆的変化をもたらしたが、熱処理に比べれば2次構造の変化は小さかった。それゆえ、圧力によるプロテアソームの活性化は、プロテアソームの活性部位におけるわずかなunfoldingによるのではないかと思われる,(2)熟成および圧力処理した牛肉内カルパインの局在性の変化を免疫電子顕微鏡により観察した結果、カルパインの局在性に及ぼす高圧処理の影響は熟成の影響に比べて激しいことが判明した。 5.ウシ血清アルブミン(BSA)のアレルゲン性に及ぼす影響 (1)BSAのアレルゲン性低下に及ぼす影響をアレルギー患者血清を感作させたヒト好塩基球様KU812F細胞からのヒスタミン遊離によって研究した,(2)アレルゲン性はBSAに加えられる圧力が高くなるにつれて徐々に減少した,(3)圧力によるBSAのアレルゲン性低下はBSAの3次構造の変化に関係する様に思える。 6.食肉の呈味物質の生成に関与する酵素に及ぼす影響 呈味物質の生成に関与する酵素活性は高圧処理を加えた肉中でも保持されているために、高圧処理を加えた肉中においてもイノシン酸は生成されていた。
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