研究課題/領域番号 |
15208028
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
藤崎 幸蔵 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (00292095)
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研究分担者 |
杉本 千尋 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (90231373)
辻 尚利 (独)農業研究機構, 動物衛生研究所, 主任研究官 (70355171)
横山 直明 国立大学法人帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教授 (80301802)
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キーワード | マダニ / cDNAライブラリー / マダニ生物活性分子 / TBM / バキュロウイルス / 組換え体 / バイオ殺ダニ剤 / 抗マダニワクチン |
研究概要 |
マダニはヒト以外の動物では第1位に、またヒトでは蚊に次いで第2位に重要な疾病媒介節足動物であり、マダニとマダニ媒介性疾病によって世界の畜産が蒙っている経済的被害額は毎年70億米ドルの巨額にのぼる(FAO,1995)。加えて、地球温暖化や国際交易増大によるマダニ分布域の変容・拡大と、マダニ媒介性の新興・再興感染症の出現は、先進国と途上国に共通する新たな大問題となっている。DDTが発明された1950年代以降、マダニとその媒介疾病の防圧はもっぱら各種の化学物質を殺ダニ剤として用いることによって行われてきた。しかし、近年、化学的殺ダニ剤に対する抵抗性マダニの出現、残留殺ダニ剤による環境・食物連鎖の汚染、強化された安全性試験による新規化合物開発経費の高騰などの問題が深刻化している。このため、現行のマダニ対策は抜本的な見直しを迫られており、化学的殺ダニ剤に代わりうる安全性・有効性・経済性に優れた新たなマダニ防除技術の開発が、今や世界的に焦眉の急務となっている。このような社会的ならびに学術的背景に鑑み、本研究は、第1には、マダニの生存に重要な役割と機能を発揮する物質(マダニ生物活性分子tick bioactive-molecules:TBMと総称)の探索と特性解明を行い、ワクチン候補物質としての可能性を検証し、有効性が示されたTBMの遺伝子は、ヘルペスウイルスに導入し抗マダニウイルスベクター組換えワクチンとして、免疫学的マダニ防除の目的に活用することである。第2には、TBMの特性解明の過程で組換え蛋白作成目的に利用したAcNPVなどのバキュロウイルス組換え体について、殺ダニ活性を検証し、バイオ殺ダニ剤としての可能性を追求することである。そして、最終的にはこれらの成果に立脚し、抗マダニワクチンとバイオ殺ダニ剤の併用によって、化学的殺ダニ剤に極力依拠しないマダニ防除を実現することを、究極の目的とするものである。 平成16年度においては、マダニの唾液腺と中腸のcDNAライブラリーを作製し、マダニの頻回吸血による家兎抗マダニ血清を用いたイムノスクリーニングと、プラックスクリーニングの併用によって、メタロプロテアーゼ、アミノペプチダーゼなど10種類以上の新たな生物活性分子を発見した。現在これらの局在、発現動態、特性などの解明を図っている最中である。また、既存のキチナーゼ遺伝子について、ワクシニアウイルス組換え体を作製し、これに対する抗体を産生した宿主動物ではマダニの吸血が著しく阻害されることが判明した。また、VEGF刺激下のHUVEC血管内皮細胞の増殖が、組換え体トロポニンI分子によって効率的に阻止されることをはじめて明らかにした。
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