研究課題/領域番号 |
15208030
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
臨床獣医学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
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研究分担者 |
辻本 元 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
西村 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (80172708)
中山 裕之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (40155891)
森松 正美 北海道大学, 大学院医学研究科, 助教授 (70241370)
望月 学 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (90261958)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2006
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キーワード | 犬乳腺腫瘍細胞株 / 猫乳腺腫瘍細胞株 / 犬肥満細胞腫 / 接着因子 / レチノイド / E-カドヘリン / マイクロアレイ / 転移浸潤 / invasion |
研究概要 |
本研究では、我々が実際の症例から樹立した犬の乳癌細胞株、猫の乳癌細胞株、犬の肥満細胞腫細胞株、犬の骨肉腫細胞株、犬の悪性メラノーマ細胞株の5種類を用い、これらの腫瘍の浸潤能、転移能に関与する因子の解明を試みた。 犬の乳癌細胞株は同一症例の原発巣と転移巣からそれぞれ樹立した4ペアの細胞を用い、接着因子であるE-cadherin-catenin系の解析を行った。これらの細胞における発現には差がなかったが、cadherin機能の面では、転移巣由来細胞が原発巣由来の細胞より高く、原発巣から遊離した細胞がより転移しやすいことを示す、従来の説を支持する結果であった。さらに、これらの細胞に対し、従来から浸潤・転移に関わるとされている24の因子についても解析したが、転移巣/原発巣由来細胞株間に明確な差はみられなかった。しかしその中で、シアリルルイスX(sLe(x))に関しては、転移性胸水由来の細胞で強い発現がみられ、かつ、性状乳腺組織には発現がなく、乳癌組織には約60%で発現することから、肺転移時の血管内皮への接着に関与する可能性が示唆された。現在。クローン化した乳癌細胞を用いたマイクロアレイによって、さらに転移・浸潤関連因子の探索を継続している。 一方、猫の乳癌に関しては、ケモカインレセプタアーCXCR4およびそのリガンドSDF-1が転移巣由来細胞でより高く発現することから、これも転移関連因子である可能性が示唆された。 犬の肥満細胞腫に関しては、レチノイドの抗腫瘍効果を確認し、さらにそれが人の前骨髄性白血病と同様、レセプターRARαを介して生じている可能性を示した。さらに、臨床試験において、レチノイドは一つの有力な化学療法剤になりうる可能性を示し、今後、他の抗腫瘍薬、グルココルチコイドとの併用による新規治療法の開発につながるものと考えられる。 犬の骨肉腫に対しては、犬のワイルドタイプP53によるアデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療を試みた。その結果、in vitroでは明らかに腫瘍細胞内へのp53取り込みが認められ、また症例の1頭では部分的な縮小を示した。一方、メラノーマに対しては、やはり腫瘍の悪性度と関連する染色体不安定性に着目し、今後検討を進める予定である。
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