研究課題
基盤研究(A)
熱帯湿地帯(インドネシア・カリマンタン島南部、タイ南部及びベトナム・メコンデルタ)の湖沼水、そこから流出する河川から試料水および湖沼、河川及び海底堆積物を採取し、湿地水に溶解している有機物および無機イオンの濃度を継続的に測定した採取地点についてはアジア生物資源環境研究センターで収集しているGPS及び航空写真等の情報に基づいて、現地調査を行い設定した。研究設備および政治的安全保障の面からの制限により、現地での水可溶有機物の単離及び分析が困難な状況になったので、北海道美唄市の石狩川泥炭湿地から湿地水を大量に採水し、水可溶有機物の単離を単離し、その分析を実施した。また種々の深さから泥炭を採取し、化学構造分析を行い、植物細胞壁成分、特にリグニンの水可溶化のメカニズムの解析を行った。さらに木粉をもちいて、水熱反応および亜臨界水反応を行い、原油成分である炭化水素および芳香族化合物の生成を認めた。1.熱帯アジア地域の森林域及び湿地の湿地水、泥炭および土壌の分析を通じて、湿地水および土壌有機物の有効な分離法を確立した。2.土壌有機物、河川水中の溶存及び懸濁物質に付着する有機物について、植生環境及び流域環境におけるその動態を解析した。本研究においてはオンサイトで可能な事項は、所有する携帯型分析装置で行うとともに、試料を持ち帰って詳細に検討した。その結果、泥炭湿地から溶出した有機物の主成分は著しく微生物変性を受けた水可溶リグニンであり、タイ国ナラチワート県のトデーン原生泥炭湿地8,800haから年間1,000トンを超す水可溶リグニンが排出されていることが明らかにされた。3.熱帯アジア地域の森林域及び湿地から得られた泥炭および北海道美唄市の石狩川泥炭湿地らの湿地水から単離した水可溶有機物中のリグニンを単離し、その構造の解析を進めると共に、そのリグニンを用いて超臨界条件下での反応を行った。あわせて中国東北部の強アルカリ土壌地帯での土壌有機物の蓄積状況、投入された植物遺体によるシルト土壌の団粒化についても検討した。
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