研究課題/領域番号 |
15208032
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 光雄 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (40220347)
|
研究分担者 |
小野 比佐好 大阪大学, 遺伝情報実験センター, 助手 (40224274)
林 誠 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30291933)
|
キーワード | 共生工学 / マメ科植物 / 根粒菌 / メタロチオネイン / ファイトケラチン / 重金属 / ファイトレメディエーション |
研究概要 |
マメ科植物と根粒菌との共生系を利用して、生物的窒素固定能に加えて重金属集積などの有用機能を付与し発現する共生工学基盤技術を構築し、環境浄化に応用する目的で下記の研究を行った。 1.根粒菌染色体への組込みベクターの作成と形質転換:根粒菌に導入する遺伝子の安定化および数種類の遺伝子を同時導入するため、メタロチオネイン4量体遺伝子をTn5を用いてMesorhizobium huakuii subsp.rengei B3株染色体に組込んだ。この組換え株にファイトケラチン合成遺伝子AtPHSをnifHプロモーターにつないだベクターを導入した。 2.根粒バクテロイドの輸送系の改変による植物組織への物質移動の試み:上記遺伝子を導入した組換え根粒菌は、野性株に比べて20倍のカドミウムの取り込みを示したが、この組換え菌をレンゲソウに接種して、根粒を形成させたところ、組換え根粒では野生型根粒の1.5-1.8倍のカドミウム蓄積にとどまった。これは根粒内への重金属取り込み能の不足と考えられた。そこで、金属イオンの膜透過に関与するシロイヌナズナのIRT1(iron-regulated transporter)遺伝子を取得し、上記組換え根粒菌株に組み込んだ。IRT1遺伝子を組み込んだ根粒菌はカドミウムを1.5倍近く取りこんだ。そこで、この組換え根粒菌をレンゲソウに感染させ、根粒を形成させた。 3.創生レンゲソウの重金属集積能試験:B3:PCS(IRT1)を感染して根粒形成させたレンゲソウを、カドミウムを含む人工土壌で生育させ、植物組織各部位のカドミウム濃度を測定した。その結果、IRT1遺伝子発現によるカドミウム集積能には差が見られなかった。したがって、根粒内における根粒菌によるカドミウム集積の限定要因は、植物細胞によるものだと考えられた。 4.土壌のファイトレメディエーション:稲田の土壌を用いて組換えレンゲソウを栽培して、カドミュウム浄化能を試験した。非組換え根粒菌を感染させたレンゲソウでは、汚染人工土壌中のカドミウム取り込み効率が約0.4%であったのに対して、MTL4およびAtPCSの2つの重金属結合遺伝子を組み込んだ根粒菌を感染させたレンゲソウは、同程度のカドミウムに汚染されたフィールド土壌中のカドミウムを約9%も吸収していた。
|