研究概要 |
ユビキチン(Ub)は,プロテアソームでのタンパク質分解だけでなく,タンパク質の細胞内輸送やリソソームでの分解の過程においても重要なシグナルとして機能する.細胞膜に存在する受容体がUb化されるかどうかによって,エンドサイトーシスされた後に細胞膜へとリサイクルされるのか、それともリソソームへ輸送されて分解されるのかが決まる.これらの過程は,Ub結合モジュールを有する様々なアダプタータンパク質による調節を受ける.本研究では、最近発見した新規のUb結合モジュール(GATドメイン)を有するGGAおよびTom1ファミリーのタンパク質に焦点をあて,その構造と機能の相関を中心にして研究を行なった. 1.GATドメインとUbとの複合体のX線結晶構造解析 GGA3-GATドメイン,およびTom1--GATドメインとUbの複合体のX線結晶構造解析を行なった.生化学的データおよびNMRによる構造データと比較することにより,GATドメインには2ケ所のUb結合部位が存在することが明らかになった.この結合様式から,GATドメインによるUb化タンパク質の細胞内輸送やリソソームでの分解の調節に関するモデルを提唱した. 2.Tom1ファミリータンパク質と,Tollip,クラスリンおよびUb化タンパク質との相互作用の解析 Tom1ファミリータンパク質は,GATドメインを介してUbと結合するだけでなく,Tollipとも相互作用することを明らかにした.TollipはC2ドメインを介してエンドソーム膜と結合し,Tom1ファミリータンパク質はTollipを介してエンドソーム膜に結合することを明らかにした.さらに,Tom1ファミリータンパク質はC末端領域を介してクラスリンと結合することを示した. Tollip自体もUbと結合できることから,これらの相互作用によりUb化タンパク質の細胞内輸送やリソソームでの分解は複雑な調節を受ける可能性を示した.
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