研究概要 |
我々はすでに,リボヌクレオシド糖部環内酸素原子を硫黄原子に置換した4-チオリボヌクレオシドの立体選択的合成法を確立した.今年度の研究では,4種類の天然型核酸塩基を持つそれらの,5-三リン酸体を化学的に合成し,SELEX法に応用可能性を調べることを目的にした.2および3位水酸基をアセチル基で保護した4-チオリボヌクレオシドにEcstein法を適用して収率良く5-三リン酸体を合成した.そのうち,4-チオUTP(^TUTP)と4-チオCTP(^TCTP)を用いてSELEX法に対する基礎的検討を行った.まず,T7 RNA polymerase (pol)を用いて43mer2本鎖DNAの転写反応を^TUTP,^TCTP, ATPおよびGTP存在下行ったところ,43merRNAの生成は極めて低収率であった.この原因は,テンプレートDNA中の7,8番目に連続したGを入れたために^TCTPがRNA中に連続して取り込まれなければならないからであることが明らかになった.この実験を元に,10番目までにピリミジンヌクレオシドを持たない配列にしたところ,30merおよび59merRNA中の5-末端から10番目以降の任意の位置にピリミジンヌクレオシドを導入できることが明らかになった.さらに,これら^TUTPおよび^TCTPを含む4-チオRNAは問題なくDNAに逆転写されることも明らかになった.次に,^TUTPを6分子,^TCTPを6分子含む30merの4-チオRNAと天然型RNAについて,ピリミジンヌクレオシドの3-側のリン酸ジエステル結合を選択的に加水分解するRNase Aを用いて安定性を比較した.その結果,天然型RNAの半減期は22分であるの対して,4-チオRNAのそれは約19.5時間と,約50倍以上の安定性を持つことが明らかになった.現在,^TUTPおよび^TCTPを含む4-チオRNAを用いてトロンビンに対するアプタマーの取得実験を行っている.ニトロセルロース膜を用いて,トロンビン濃度を1μMから0.05μMに徐々に下げSELEXを9回行ったところ,50%以上のRNAがトロンビンに結合し,ニトロセルロース膜に結合しているRNAはわずか3%であった.
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