研究概要 |
昨年度に引き続き2種類の4'-チオリボヌクレオシド5'-三リン酸体を化学合成し,SELEX法に応用可能性を調べることを目的にした.作年度の予備的実験で4'-チオUTP(^TUTP)と4'-チオCTP (^TCTP)が,T7 RNA polymerase (pol)を用いる系で、テンプレートDNA中の10番目までにピリミジンヌクレオシドを持たない配列にしたところ,30merおよび59merRNA中の5'-末端から10番目以降の任意の位置にピリミジンヌクレオシドを導入できることが明らかにした.そこで、この系を用いてヒトα-トロンビンに対するアプタマーの取得実験を行った.ニトロセルロースフィルターを用いて,トロンビン濃度を1μMから10nMに徐々に下げ,また、RNA濃度を1μMに固定し、反応温度を最初の7回目までを25℃で、最後の3回を37℃でSELEXを行った.その後、RNA配列をクローニングしたところ、配列は3つのグループに分けることができた.クラス1およびクラス2はトロンビン特異的に親和性を示すが、クラス3はニトロセルロースフィルターに親和性を示した.クラス1およびクラス2のRNAの2次構造予測および高次構造部分の化学合成を行い、それぞれについてヒトα-トロンビンに対する結合親和性を調べたところ、クラス2-1-37はKd=4.7nMと非常に強い親和性を示し、すでに報告されている天然型RNAによるトロンビンアプタマーより20倍強い結合能を有していた.一方、クラス1に属するアプタマーはトロンビンに対するKd値は大きく、アプタマー自体の安定構造とトロンビンに対する結合構造とは異なるのではないかとの感触を得た.クラス2-1-37の4'-チオRNAアプタマーと同じ配列を持つ天然型RNAアプタマーのRNase Aに対する安定性を調べたところ、4'-チオRNAアプタマーの方が約10倍安定であった.
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