研究課題/領域番号 |
15209004
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永沼 章 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (80155952)
|
研究分担者 |
久下 周佐 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (50186376)
大橋 一晶 大阪大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (70344679)
黄 基旭 東北大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (00344680)
|
キーワード | メチル水銀 / 毒性発現機構 / 耐性 / ユビキチン / F-Box蛋白質 / Cdc34 |
研究概要 |
我々は、Cdc34がユビキチン転移酵素として関与するユビキチン・プロテアソームシステムの亢進が酵母及びヒト細胞にメチル水銀耐性を与えることを見出している。本システムにおいて基質蛋白質の認識を担うサブユニットであるF-Box蛋白質は酵母には少なくとも17種存在するが、その中でHrt3およびYlr224wが高発現によって顕著なメチル水銀耐性を酵母に与えることを15年度に見出し、16年度にはHrt3が認識する蛋白質としてDld3およびGrs1を、また、Ylr224wが認識する蛋白質としてEno2を同定することに成功した。そこで本年度はこれら蛋白質について検討したところ、3つの蛋白質が全てメチル水銀毒性増強作用を有し、さらに、細胞内でユビキチン化された後にプロテアソームで分解されることが判明した。したがって、ユビキチン・プロテアソームシステムはこれらメチル水銀毒性の増強に関わる蛋白質の分解を促進させることによってメチル水銀毒性に対して防御的に作用するものと考えられる。Dld3およびEno2は共に細胞内でのピルビン酸の生成経路に関わる酵素であり、Dld3およびEno2が高発現するとミトコンドリアへのピルビン酸流入量が増加すると予想される。実際に、ピルビン酸のミトコンドリア中への取り込みに関与するトランスポーターであるYi1006wを欠損させた酵母はメチル水銀に対して耐性を示した。また、過剰のピルビン酸を酵母またはヒト細胞の培地中に添加することによってメチル水銀毒性が顕著に増強されることも判明した。ピルビン酸の単独添加はメチル水銀毒性に影響を与えないことから、これらの結果は、ミトコンドリア中へのピルビン酸の流入促進がメチル水銀毒性の増強を引き起こすことを明確に示している。
|