研究概要 |
カフェインはCYP1A2およびNAT2などの薬物代謝酵素の表現型を評価することができるプローブドラックとして古くから利用されてきた.我々はカフェインの2次代謝反応の1つである1,7-dimethyl-uric acid (17U)生成反応にCYP2A6が関与することおよびCYP2A6遺伝子多型が本反応に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.本研究ではカフェインテストを用いたCYP2A6のフェノタイピングが可能であることを見出したので報告する. 健常人ボランティアよりインスタントコーヒー飲用前後の尿を採取した.尿中カフェイン代謝物をHPLC法により定量し,CYP2A6酵素活性の指標となるCYP2A6 indexを算出した.被験者の末梢血よりDNAを調製し,CYP2A6遺伝子型をPCR-RFLP法,アリル特異的PCR法またはハィブリダイゼーションプローブ法により判定した. CYP2A6 indexには約12倍の個人差が認められた。全欠損型変異であるCYP2A6*4をホモまたはヘテロ接合体で有する被験者のCYP2A6 indexは,野生型であるCYP2A6*1をホモ接合体で有する場合と比較して有意に低値を示した.このことから,カフェインテストを利用して日本人のCYP2A6フェノタイピングができることが示唆された.CYP2A6はテガフールおよびファドロゾールなどの抗がん薬の代謝的活性化および解毒化にそれぞれ関与する.したがって,カフェインテストを利用した簡便なフェノタイピングは,これらの抗がん薬の投与設計に応用できる可能性が考えられた.
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