研究概要 |
CYP2A6は抗がん薬であるテガフール,ファドロゾールおよびレトロゾールなどの医薬品の代謝に関与することを明らかにしてきた.CYP2A6の酵素活性には大きな個人差が存在することが知られており,CYP2A6の遺伝子多型がその原因の一部であると考えられている.これまでの検討で上記の薬物の体内動態にもCYP2A6遺伝子多型が関与していることを明らかにした.したがって,CYP2A6により代謝される薬物の効果および副作用の発現を事前に予測するためには,CYP2A6の遺伝子多型を迅速に判定する必要がある.特に日本人では,3'-非翻訳領域における置換型多型(CYP2A6^*1B),全欠損型多型(CYP2A6^*4A)およびエクソン9に存在する一塩基置換型多型(CYP2A6^*7),5'-上流領域の遺伝子多型であるCYP2A6^*9が高い頻度で存在している.そこで,蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)法を用いて,CYP2A6遺伝子多型(CYP2A6^*1B, CYP2A6^*4A, CYP2A6^*7およびCYP2A6^*9)の迅速判定法の確立を試みた.FITCラベルしたプローブにより,それぞれの遺伝子多型に対する野生型と変異型アリルを完全に分離した.CYP2A6^*1BおよびCYP2A6^*4Aは2色の蛍光色素を用いることにより,約1時間で同時に判定することが可能であった.CYP2A6^*7およびCYP2A6^*9は同一の反応条件下,約30分で同時に判定することが可能であった.日本人196検体を用いた検討にいて,これまでに確立してきたPCR-RFLP法およびアリル特異的PCR法による判定結果と今回確立した判定法での結果は,完全に一致した.
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