研究課題/領域番号 |
15209007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野間 昭典 京都大学, 医学研究科, 教授 (00132738)
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研究分担者 |
松岡 達 京都大学, 医学研究科, 助手 (00263096)
皿井 伸明 京都大学, 医学研究科, 助手 (00335259)
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キーワード | 興奮-収縮連関 / 心臓 / NADH / ミトコンドリア / カルシウム |
研究概要 |
心筋細胞における「エネルギー代謝-機能連関」を定量的に解析する目的で、モルモット単離心室筋細胞から、細胞膜電位・ミトコンドリアNADH蛍光・細胞収縮を同時記録した。単離心室筋細胞にパッチ電極を当て、穿孔パッチ法により通電刺激した。高頻度刺激を始めると、細胞収縮は徐々に増加し安定したが、NADH蛍光は一過性減少の後次第に増加した。高頻度刺激を停止すると、NADH蛍光は一過性上昇の後、コントロールレベルに回復した。NADH蛍光増加は、ミトコンドリアCa^<2+>ユニポーター阻害薬であるruthenium redで抑制され、ミトコンドリア内Ca^<2+>変化がNADH蛍光変化に関連することが示唆された。 高頻度刺激の初期に起こる一過性NADH蛍光の低下は、ATP加水分解の増加に伴うADPまたは無機リン酸の増加に起因すると考えられた。そこで、サポニンで細胞膜をpermeabilizeしたモルモット心室筋細胞を用いてADPと無機リン酸のNADH蛍光抑制の半飽和濃度を求めたところ、それぞれ約0.1mMであった。生理的状態でのADPと無機リン酸濃度はそれぞれ、0.04〜0.09mM、3〜5mMであるので、我々の実験条件下ではADP濃度増加が、刺激頻度増加にともなうNADH蛍光低下の原因であることが推測された。 酸化的リン酸化過程を組み込んだ「心筋細胞 興奮-収縮-エネルギー代謝」のコンピュータモデルを用いて、実験で測定されたNADH蛍光変化を再現するために必要なNADH産生増加の程度を検討した。収縮頻度に依存したNADH産生増加(Ca^<2+>によるNADH産生活性化)が有る場合でもない場合でも、定常状態におけるATP産生速度には変化がなかった。収縮頻度に依存したNADH産生増加が起こる場合、ADPと無機リン酸によるフィードバックコントロールが約20%減少することが推測された。
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