研究課題
基盤研究(A)
1.心筋細胞におけるエネルギー代謝-機能連関を定量的に解析する目的で、モルモット単離心室筋細胞から、細胞膜電位・ミトコンドリアNADH蛍光・細胞収縮を同時記録した。穿孔パッチ法による電流パルス刺激で高頻度細胞収縮を誘発すると、細胞収縮は徐々に増加し、NADH蛍光は一過性減少の後に緩徐に増加した。低頻度刺激に戻すと、NADH蛍光は一過性に上昇した後コントロールレベルに回復した。高頻度収縮時のNADH蛍光増加は、Caユニポーター阻害薬(ruthenium red, Ru360)で抑制された。また、Rhod-2を用いてミトコンドリアCa(Ca_m)を測定したところ、高頻度収縮に伴いCa_mは緩徐に増加した。これらのデータから、高頻度収縮に伴いCa_mが増加し、ミトコンドリア脱水素酵素が活性化され、NADH産生が増加する機序が推測された。また、高頻度収縮の初期における一過性NADH蛍光低下は、細胞質ADP濃度増加によるフィードバックコントロールの結果であることが、サポニン透過性細胞におけるNADH蛍光測定から推測された。高頻度収縮停止時の一過性NADH蛍光増加は、NADH産生の脱活性化が緩徐に進行するためと考えられる。さらに、高頻度収縮時のNADH蛍光増加は、ラット及びマウス心室筋細胞においても起こることが確認された。すなわち、高頻度細胞収縮時にCa_mが上昇し、ミトコンドリアNADH産生が増加する機構は哺乳類心室筋細胞に共通する機構であると考えられる。2.心筋細胞における興奮-収縮-エネルギー代謝のコンピュータモデルを作成した。NADHの産生がCa_mにより活性化されると仮定することで、上記実験データの大部分を再現することが可能であった。詳細な解析から、ミトコンドリアATP産生に関して、フィードバックコントロールの寄与は約77%、NADH産生活性化の寄与は約23%であることが明らかになった。
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