研究課題/領域番号 |
15209008
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
倉智 嘉久 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30142011)
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研究分担者 |
稲野邉 厚 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (00270851)
日比野 浩 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70314317)
石井 優 大阪南医療センター(臨床研究部), 免疫異常疾患研究所, 研究員 (10324758)
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キーワード | RGS蛋白質 / G蛋白質 / カリウムチャネル / 脂質ラフト / カルモジュリン / FRET |
研究概要 |
本研究の目的は、G蛋白質制御カリウムチャネル(K_G)の生理機能を支える細胞内メカニズムを分子構造レベルで、しかも動的に明らかにすることである。研究代表者らはこれまでに、心筋細胞のK_GチャネルがG蛋白質のGTPase活性の促進因子であるRGS(Regulators of G protein signaling)蛋白質により機能制御され、その分子メカニズムとしてホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP_3)とCa^<2+>/カルモジュリン(CaM)複合体との相互作用が重要な役割を果たしていることを示してきた。すなわち、心筋のRGS蛋白質の機能は定常状態ではPIP_3によって抑制されているが、受容体刺激などに応じて細胞内にCa^<2+>が流入しCa^<2+>/CaM複合体が形成されると、これがPIP_3と競合的に結合してRGS蛋白質の抑制制御を解除することを明らかにした。また、PIP_3およびCaMの結合部位がRGSドメイン上の塩基性アミノ酸残基クラスター上にあることを示した。本年度はさらに、G蛋白質やイオンチャネルなどの集積している細胞膜上のドメインである脂質ラフト(主にコレステロールが集積した直径数百nm以下のマイクロドメイン)に着目し、RGS蛋白質とCaMとの相互作用に関してFRET(Fluorescent resonance energy transfer)法を用いた空間的解析を行った。FRET法は蛍光蛋白質を融合させた蛋白質間の相互作用を空間(位置)的に解析する手法であり、ECFPとVenusをそれぞれCaMおよびRGS4に融合してHEK293細胞に共発現させ、両者が近接した際に起こる蛍光強度の増強(energy transfer)をイメージング解析した。その結果、ionomycinによる細胞内Ca^<2+>の増加によりFRETシグナルの増強が観察されたが、CaMやPIP_3に結合できないRGS変異体ではシグナルは検出されず、両蛋白質がCa^<2+>刺激により特異的に会合することが示された。さらに、コレステロールを除去し脂質ラフトを壊すメチル-β-サイクロデキストリン処理や、脂質ラフトに集積できないパルミチン酸化阻害変異体でもFRETシグナルは検出されず、RGS蛋白質とCa^<2+>/CaM複合体が脂質ラフト上で特異的に会合・相互作用することが確認された。これらの知見は、G蛋白質を介するK_Gチャネルの機能制御機構を分子レベルで理解するうえで大きく貢献するものと考えられる。
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