研究概要 |
1.免疫抑制薬感受性遺伝子としてRab GDI(GDP dissociation inhibitor)を新たに同定:免疫抑制薬感受性と高温感受性を同時に示す新たな分裂酵母変異体を単離し,その遺伝子を決定したところ細胞内輸送で重要な役割を果たすRab GDIをコードしていた。さらに,本変異体の高温感受性を相補する遺伝子としてリン脂質輸送体をコードする遺伝子を単離した。さらに,Rab GDIの活性がリン脂質により制御されていることを明らかにした。 2.免疫抑制薬標的分子であるカルシニューリン活性のリアルタイムモニタリング:カルシニューリンは臓器移植時に用いられる免疫抑制薬の分子標的である。また,カルシニューリンは細胞内Ca^<2+>により活性化されるタンパク質脱リン酸化酵素で,酵母からヒトにまで保存されている。本研究では,生細胞におけるカルシニューリン活性をリアルタイムにモニターするシステムを確立した。培地にカルシウムを添加するとカルシニューリンが活性化され,免疫抑制薬タクロリムスを添加すると抑制されることがリアルタイムに観察できた。 3.高塩存在下における免疫抑制薬感受性を回復する変異体解析:野生細胞は高塩濃度培地において免疫抑制薬感受性を示す。この感受性を回復する変異体を多数単離し,その一つとして,ファルネシルトランスフェラーゼをコードするcppl^+遺伝子の変異体を単離した。この変異体では155番目のアミノ酸であるアスパラギン酸がアスパラギンに代わっており,その活性が部分的に低下していた。この部分活性低下によって,Rho2/PKC/MAP kinase系の活性が著しく低下すると免疫抑制薬に対する感受性が回復することが明らかになった。本結果より,免疫抑制薬による副作用を軽減する分子標的の一つとしてファルネシルトランスフェラーゼが示唆された。
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