研究課題/領域番号 |
15209011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清木 元治 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10154634)
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研究分担者 |
梁 幾勇 東京大学, 医科学研究所, 講師 (70332583)
泉 友則 東京大学, 医科学研究所, 寄付研究部門教員(常勤形態) (00261694)
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キーワード | MT1-MMP / 浸潤装置 / がん細胞 / プロテアーゼ / 細胞接着分子 |
研究概要 |
ヒト線維芽細胞腫HT1080をもちいて、FLAG標識した膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)をテトラサイクリン制御下で発現誘導させる系を確立した。この細胞溶解液よりMT1-MMPを抗体カラムを用いて精製した。MT1-MMPを発現誘導した細胞から得られた精製画分を電気泳動で調べると、複数の蛋白質が存在しており、これらが直接・間接的にMT1-MMPと複合体を形成していると想像された。この精製画分に含まれる蛋白質を網羅的に同定するために、プロテアーゼ消化した後に生じたペプチドを液体クロマトグラフィーで分離し、分離画分を併設した質量分析機に送り込んで、分子量とアミノ酸配列情報を同定した。その結果を蛋白質データベースと照合することにより、この画分中に160種類を越える蛋白質を同定することができた。この中で約3割が巻く蛋白質であり、6割が細胞内蛋白質であった。細胞膜蛋白質に注目すると、これらの中にはインテグリンb1鎖、CD63などMT1-MMPと複合体を形成することが報告されている分子が含まれていた。一方で、複合体の調整法からも予想されるように、細胞骨格系の分子は含まれておらず、得られた解析結果が、細胞外基質・接着分子・細胞骨格を結ぶ強固な細胞接着複合体は反映していないことも明かとなった。同定された膜蛋白質は8例のうちの1例をのぞいて免疫沈降法でMT1-MMPと共沈することが確認できた。また、免疫染色によって一部はラッフリング膜状で、他のものは輸送小胞やリソゾーム様構造でMT1-MMPと共存することが確認できた。また、ここで同定された膜蛋白質の多くは、すでに別に実験から、悪性のがん細胞の増殖性、浸潤性との相関が指摘されているものが多く含まれており、MT1-MMPががん細胞の浸潤を担う分子として考えられていることとも一致する結果が得られている。今後の課題として、これらの相互作用がMT1-MMPを介した細胞機能制御にどのように関わっているのかを個別に評価する必要性があり、次年度の課題でもある。
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