C型肝炎ウイルス(HCV)の感染成熟機構ならびに宿主応答を解析し、以下の成績を得た。 1)HCVシュードタイプウイルスの吸着はヘパリンによって阻害されたが、逆に感染は増強された。このことはシュードタイプウイルスの吸着には硫酸多糖類が重要であるため、ヘパリン添加によって結合阻害が観察されるが、それ以降の膜融合や侵入過程でエンベロープ蛋白質の活性発現をヘパリンが増強している可能性が示唆された。各種動物血清のシュードタイプウイルスの感染における影響を調べたところ、ヒト血清がシュードタイプウイルスの感染性を特異的に増強することが示された。 2)これまでに、HCVの二つのエンベロープ蛋白質は1回小胞体膜を貫通するI型糖蛋白質のモデルが提唱されているが、E1蛋白質は2回膜を貫通するトポロジーがコンピューター解析から示唆される。そこで、糖鎖付加部位を欠損あるいは新たに導入した変異E1蛋白質を作製し、糖鎖修飾の有無を指標にしてそのトポロジーを解析した。その結果、E1蛋白質はこれまで考えられていた1型糖蛋白質よりも、小胞体膜を2回貫通して比較的大きな細胞質領域を保持したトポロジーを取る可能性が示唆された。 3)HCVコア蛋白質は前駆蛋白質として発現された後、膜内切断酵素で切断され、成熟蛋白質として小胞体に留まり、一部は核へ移行することが明らかにされている。HCVコア蛋白質の宿主内標的蛋白質候補としてプロテアソームの活性化蛋白質であるPA28γを同定し、PA28γがHCVコア蛋白質の安定性と細胞内局在を調節していることを明らかにした。
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