C型肝炎ウイルス(HCV)の感染成熟機構ならびに宿主応答を解析し、以下の成績を得た。 1)HCVのエンベロープ蛋白質を被ったシュードタイプ水疱性口内炎ウイルス(VSV-pp)はHepG2細胞に特異的に感染し、昆虫細胞で作製したHCV様粒子(HCV-LP)の添加により濃度依存的に感染が阻害された。 2)ヘパリンがVSV-ppの感染を阻害することから、ヘパリンとの結合が活性発現に重要な各種成長因子によるVSV-ppの感染阻止活性を調べたところ、FGF、特にFGF2とFGF7がVSV-ppの感染を特異的に阻害した。 3)FGFの可溶化型の受容体(FGFR)の中で、FGFR4とFGFR5がVSV-ppの感染を特異的に阻害し、HCV-LPやC型肝炎患者血清中のHCV粒子とも結合した。また、セファロースに固層化したFGFR4とFGFR5はHCV-LPのみならず、ウインドウ期血清中のHCVを特異的に沈降した。 4)FGFR4あるいはFGFR5を恒常的に発現するCHO細胞はHCV-LPや患者血清中のHCVと特異的に結合した。特にFGFR5を発現するCHO細胞株はVSV-ppの感染を許容できるようになり、siRNAによってFGFR5をHepG2細胞からノックダウンさせると感受性の低下が観察されたことから、FGFR5がVSV-ppの侵入受容体である可能性が示唆された。一方、HepG2細胞から、siRNAによってFGFR4をノックダウンさせても、VSV-ppに対する感受性の低下は観察されなかった。 5)本研究により、FGFR4とFGFR5がHCVの新しい受容体候補分子であることが示唆された。
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