HCVに感染すると肝硬変を経て高率に肝細胞癌を発症する。我が国には2百万人ものHCV感染者が存在すると推定され、既感染者に対する有効な肝癌進展阻止法の開発が急務である。しかしながら、HCVを効率よく複製できる細胞培養系を欠くため、HCVの感染様式や発癌機構は依然として謎に包まれたままである。本研究ではHCVの宿主細胞への侵入および自然免疫の誘導を担うリセプター分子の同定を試みるとともに、ウイルス粒子の成熟過程の解析を解析し、各ステップをターゲットとした新しいC型肝炎治療法の開発の可能性を探ることを目的とした。C型肝炎患者の体内にはhCD81-tropicとhFGFR5-tropicなHCVが産生されている可能性が示唆された。この性状の違いは、感染細胞の種類(肝細胞、リンパ球など)に起因するのか、あるいは同一細胞における感染経過の違いによるものなのかは今のととろ不明である。hCD81-tropicなHCVは大量に産生されて、hCD81との相互作用を介して、主に免疫機構の撹乱やクリオグロブリン血症などの肝外病変の発症に関与し、hFGFR5-tropicなHCVは少量産生され、抗体に中和されずに持続感染に関与しているのかも知れない。
|