研究概要 |
平均粒径約100nmのGMAポリマーコート/GMA-スチレン微小球内にマグネタイト微粒子(平均粒径15nm)を内包した磁性ビーズを作製することに成功した。このビーズの表面に、抗ガンおよび抗リュウマチ剤である薬剤Methotorexate (MTX)を、リンカーおよびGMAのエボキシ環を介して固定することができた。このMTX固定化フェライトビーズを用いてTHP-1細胞質抽出液中から、MTXのレセプターたんぱく質を高効率で単離できた。これより、我々の開発した磁性ビーズはナノメートルサイズなので比表面積が大きく確保でき、それによって各種リガンドを多量に固定化できるので、高効率の診断および分析・スクリーニング用の磁性担体として使用可能であることが明らかにされた。 さらに、このGMAコート・ナノ磁性ビーズ表面にチミジンの20塩基配列のDNA単鎖を固定し、これをアナライトとして、ホールセンサー表面上に固定したデオキシアデノシンの20塩基配列のDNA単鎖とハイブリダイゼーションさせて、センサー表面上の磁性ビーズを高感度に検出することに成功した。これによって、我々の開発した磁性ビーズはDNAや生理活性物質などの診断用磁性プローブとして活用できることが示された。 さらに、抗ガンハイパーサーミヤ用の磁性担体に用いるため、平均粒径が7〜80nmの間の値をもつフェライトビーズを作製し、140Oe,120kHz,の交番磁界中での発熱特性を測定した。その結果、直径18nm近傍で発熱特性が最大となることがわかった。また、発熱に関して、120kHzという比較的低い周波数(従って非襲性において優れている)では、ヒステリシス損の寄与が少なく、ネール緩和損失が支配的であることが明らかになった。現在、ヒトの大腸ガン由来の培養細胞であるcolo205細胞の表面抗原に対するヒト型抗体をGMAコート・ナノ磁性ビーズ表面に固定化し、抗原・抗体反応を利用して磁性ビーズをcolo205細胞に結合させて、効率よく、かつ選択的にがん細胞のみを殺傷する実験条件を検討している。
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