研究概要 |
1.H.pylori(HP)感染から胃癌へ、さらに潰瘍性大腸炎からcolitic cancer発症へ至る過程における、粘膜の免疫反応について検討した。その結果胃炎胃粘膜、潰瘍性大腸炎粘膜いずれにおいても、IFNγ,TNFα,IL6,IL2の産生が著明に高く、逆にIL4などTh2系サイトカイン産生は低かった。さらにその際、いずれの粘膜においてもIL7,REG蛋白が高発現していた。そこでこれらサイトカインのIL7,REG蛋白産生におよぼす影響を見たところ、共にIFNγとIL6によってその発現は著明に増強することが明らかとなった。さらにIL7とREG蛋白の作用を見たところ、IL7,REG蛋白ともに上皮細胞に対して増殖促進効果を持つこと、さらにREG蛋白はAktのリン酸化、BclXL, Bc12の発現増強を介して抗アポトーシス作用をもつことが判明した。以上よりサイトカインを介するこれらの発現増強が、炎症から発癌の過程に関与しているものと考えられた。 2.一方胃MALTリンパ腫の発症機構について、胸腺摘出(TX)BALB/Cマウスを用いて検討した。胸腺摘出BALB/CマウスにHPを感染させると高率にMALTリンパ腫が発症した。しかしIL4KO, IL10KO, IL12KOBALB/CマウスにTXをおこないHPを感染させても、いずれの場合もMALTの発症は見られなかった。またin vitroにおけるMALTB細胞の増殖においては,組織CD4T細胞とAPCさらにHPの存在が必須であったが、この際CagPAIは必須ではなく、CagPAI以外の因子の関与が想定された。また上記より、MALTの発症にはTh1およびTh2両方の反応が必須であることが示唆された。 3.自己免疫性膵炎患者の血清中から膵組織に反応する抗体の存在をスクリーニングしたところ、PSTIに対する抗体が高率に存在していることが明らかとなった。このためPSTI抗体のELISA系を確立して検討したところ、AIP患者では通常の膵炎患者に比して、有意に抗体価が高いことが判明した。
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