研究分担者 |
野口 範子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員(常勤形態)(特任教授) (40198578)
土井 健史 大阪大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00211409)
内藤 眞 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30045786)
南 敬 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員(常勤形態)(特任教授) (00345141)
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研究概要 |
動脈硬化発症の機序をin vitro系で構築するには、流れ、炎症性因子の存在、及びこれらの刺激に応答する血管内皮細胞での遺伝子発現制御機構を綿密に再現し組み立てることが重要である。そこで我々は内皮細胞における刺激応答を包括的に理解するためマイクロアレイを用いてトランスクリプトーム解析を進めた。まず、凝固炎症性因子であるトロンビンが系内に加わった場合、動脈硬化促進に寄与するintercellular adhesion molecule (ICAM)-1, vascular cell adhesion molecule (VCAM)-1が誘導されるが、さらに1,4,18時間の時系列でもって詳細に解析した結果、全8794遺伝子のうち74(1時間で34, 4時間で21, 18時間で19)の遺伝子発現が上昇し、一方20の遺伝子が減少すること。この制御には転写因子群SRF, Egr-1, NF-AT, NF-κB, GATAを含む転写因子のカスケードが深く関わっていることを発見し、報告した。同じく炎症性因子であるtumor necrosis factor (TNF)-α,インターロイキン-1を系内に添加した場合、同様にICAM-1, VCAM-1の強い誘導が生じるが、これらの刺激のうち、TNF-αが最も強く、また長時間VCAM-1の誘導が励起されること、ICAM-1, VCAM-1の発現誘導機構は大きく異なっていて、VCAM-1誘導にはNF-κBの結合のみならず、PI3-キナーゼ、p38MAPキナーゼ経路やGATA-2の結合が必要でかつ二次的な転写産物が深く関わっていること(シクロヘキシミド添加に感受性があること)を新たに見いだした。一方、弱いずり応力で層流を系内に加えた場合、動脈硬化抑制に働くヘモオキシゲナーゼ-1の遺伝子発現が顕著に増大すること、その際には転写因子NRF-2の核内での活性化がkeyになっていることを見いだした。さらに血管内皮細胞におけるin vivoでの遺伝子発現に必要なプロモーター領域を探索するhprt-targetトランスジェニックマウスモデルを新たに構築し、内皮細胞特異的発現を示すTie-2遺伝子の転写に必要不可欠な領域及び転写因子Etsファミリー結合領域の重要性を見いだし報告した。これらの包括的な取り組みを介して、in vitroモデル系への応用性、有効性が確かめられた。
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