研究課題/領域番号 |
15209028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252457)
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研究分担者 |
山下 潤 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (50335288)
中山 泰秀 国立循環器病センター研究所, 生体工学部, 室長 (50250262)
仁藤 新治 田辺製薬(株)創薬研究所, 先端医学ユニット, 主任研究員
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キーワード | ES細胞 / 再生医療 / 前駆細胞 / 血管再生 / ナトリウム利尿ペプチド / アドレノメジュリン |
研究概要 |
我々は、"全能性"と無限の増殖能を有するマウス胚性幹細胞(Embryonic Stem Cells ; ES細胞)より、内皮細胞と血管平滑筋細胞の双方への分化が可能な"血管前駆細胞(vascular progenitor cells;VPC)"の単離同定に成功した(Nature 40:92-96,2000)。本研究課題においては、ヒトES細胞由来血管前駆細胞(human ES-VPC;hES-VPC)を同定し、ヒト血管発生分化の分子機構を明らかにし、生体において血管再生を試み虚血壊死に至りつつある心筋細胞や神経細胞を保護し再生させることで新しい再生医療を開発する。本年度は以下の研究成果を得た。 1.ヒトES細胞由来血管前駆細胞の同定とin vitroでの血管細胞の分化誘導:未分化ヒトES細胞は、アルカリフォスファターゼ、SSEA-4、TRA-1陽性を示したが、多くの細胞がFlk-1陽性であった。OP-9との共培養分化誘導法により、共培養開始8日からTRA-1陰性、Flk-1陽性の細胞群が出現した。この細胞は、Flk-1+/TRA-1-/VEカドヘリン-/PDGF受容体+であり、VEGF及びPDGF-BB存在下でそれぞれ内皮細胞及び血管平滑筋細胞の双方に分化しヒトVPCであると考えられた。 2.ヒトES細胞由来血管前駆細胞からの血管細胞の体外大量増殖及び生体移植による血管再生:ヌードマウスの皮膚にパンチ生検針にて、潰瘍を形成しその治癒課程に対するヒトES細胞移植効果を検討した。ヒトVPCより分化させた発生初期内皮細胞は継代可能であり、6継代により100倍に細胞数は増幅された。その30%の細胞は、元の発生初期の内皮細胞の性質を維持していた。残りの70%の細胞は血管平滑筋細胞に分化していた。このヒトVPCより得られた発生初期の内皮細胞及び血管平滑筋細胞を潰瘍モデルに混合移植したところ、潰瘍部の新生血管に取り込まれ再生血管の形成に寄与して、有意に潰瘍の治癒の促進が認められた。 3 ヒトES細胞由来血管前駆細胞の移植治療応用:ヌードマウス右大腿静脈結紮後1×10^<-6>個のVPC由来細胞を動脈内投与した。VPC由来細胞は、ヒトVPCより分化させた発生初期内皮細胞及び血管平滑筋細胞の混合細胞を用い、対照群として内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells ; EPC)を用いた。VPC由来細胞移植群では移植後28日において生食コントロール群及びEPC移植群に比べ有意の血流の増加を認め、42日更に血流は増加した。EPC移植群は軽度の血流上昇を認めたがその効果は一過性であった。移植された細胞が内皮細胞のみならず血管平滑筋細胞としても再生血管の形成に寄与していた。 以上より我々の同定したES細胞由来血管前駆細胞の血管再生医療への応用の可能性が示された。
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