研究概要 |
表皮は常に環境中のさまざまな病原体にさらされており、物理的なバリヤーであると同時に、表皮自身が独自の病原体の認識・排除機能を持ち、自然免疫のバリヤーを形成している。表皮角化細胞は最初に病原体に接触する細胞としてTLRを介して病原体を認識し、さらに抗菌活性を持つペプチドを産生することを明かにした。 角化細胞はTLR2を発現し、グラム陽性菌を認識する。細胞内分化制御因子であるASK1は角化細胞のTLR2の発現を制御した。すなわち、より分化した状態の角化細胞ほど、グラム陽性菌に対して反応しやすいと考えられる。また、角化細胞はTLR3を発現し、二重鎖RNAに反応してIFN-βを産生した。そして、IFN-βの産生を介してMIP-1αを産生し、ウイルス感染に伴う皮膚の炎症反応に関わっていると考えられる。また、TLR3の発現はIFN-α,βにより増強し、二重鎖RNAに対する反応が強くなった。これは、二重鎖RNAに対する反応の増幅機構であると考えられる。 ヒト正常表皮においてhBD1-3,LL37はいずれも上層に発現していた。病原体に接触する細胞ほどより強くこれらの抗菌ペプチドを発現していると考えられる。角化細胞の分化制御因子であるASK1はTLR2と同様にhBD1-3,hCAP18/LL37の発現を誘導したことから、これらの抗菌ペプチドは分化によって誘導されると考えられる。 創傷治癒は感染防御にとって必須であり自然免疫は創傷治癒をも制御している可能性がある。角化細胞の遊走は創傷治癒において重要な過程であり、LL-37はHB-EGFのsheddingを介するEGFRのtransactivationとSTAT3を介して角化細胞の遊走を誘導していた。LL-37は抗菌活性だけではなく、創傷治癒を促進することにより、病原体から生体を防御しているものと考えられる。
|