研究課題
基盤研究(A)
我々はアルツハイマー病の大半を占める弧発性アルツハイマー病における神経細胞死がプレセニリン2(PS2)のエクソン5を欠損するスプライシング変種(PS2V)の発現誘導により惹起されることを明らかとした。もしPS2Vに夜神経細胞死の機序を解明できその機序を制御できたのならば弧発性アルツハイマー病における神経細胞死を防ぎ新規治療薬の開発につながる。もし弧発性アルツハイマー病患者髄液でPS2Vの濃度が上昇していれば弧発性アルツハイマー病の早期診断薬の開発につながる。本研究は以上2点を研究のゴールとした。PS2Vの発現機序と其れによる神経細胞死パスウェイの研究:神経細胞に低酸素ストレスが付加されると神経細胞ではHMGA1aの発現が上昇する。発現上昇したHMGA1aはPS2遺伝子エクソン5に結合し、スプライシング因子を制御し、成熟mRNAが作られる際にイントロンとともにエクソン5がスプライシングアウトされ、エクソン5を欠損するPS2VmRNA,PS2V蛋白が産生される。このPS2Vは小胞体の3種の蛋白質品質管理センサーと結合しその機能を抑制する。このような状況に小胞体ストレスが付加されると神経細胞小胞体に折りたたみ不良蛋白質が過剰蓄積し神経細胞死に至ることを解明した。事実低酸素刺激で神経細胞に特異的に発現上昇するHMGA1aの機能をデコイで制御するとPS2Vの発現が抑制でき、小胞体ストレスによる神経細胞死を抑えることができた。以上の事実はHMGA1aデコイが弧発性アルツハイマー病の治療薬として有望であることを示す。それでは小胞体ストレスにより折りたたみ不良蛋白質が小胞体に過剰蓄積すればなぜ神経細胞死が起きるのであろうか。我々は次にこの問題に取り組んだ。その結果小胞体に小胞体ストレスが加わり折りたたみ不良蛋白質が過剰蓄積すると小胞体膜の存在したカスペース4が活性化し細胞質に流出し、活性化カスペース4はカスペース3を活性化、細胞死の引き金を引くことが明らかとなった。小胞体ストレスを付加された神経細胞においてカスペース4の活性をsiRNA法で抑制すると神経細胞死を抑制しうる。従ってカスペース4の活性制御もアルツハイマー病の治療薬として有望であることを確立した。弧発性アルツハイマー病の早期診断薬の開発:弧発性アルツハイマー病患者の髄液においてはPS2Vの濃度が正常人或いは他の神経変性疾患患者髄液と比べて有意に上昇していた。以上の事実はPS2Vが弧発性アルツハイマー病の早期診断薬として有望であることを示す。
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