研究概要 |
昨年度研究で、味細胞の応答記録と分子発現との共解析システムの開発と、受容体T1r3-KOマウスの鼓索神経及び舌咽神経応答の解析を行い、味細胞の味応答記録では、ルースパッチクランプ法で単離した茸状乳頭味蕾味細胞から味応答を活動電位として記録する方法を確立し、T1r3-KOマウスの解析では、T1r3-KOマウスにおける甘味応答の低下は刺激種依存的で、SC45647など人工甘味料の低下にくらべ、グルコースなど糖応答の低下は軽度であることが明らかにした。今年度はルースパッチで味応答記録した味細胞からSinglecell RT-PCR法で発現分子を解析した。その結果、甘味応答した味細胞はT1r3とGgustをそれぞれ異なる組み合わせで発現するものに分類されることが分かった。すなわち甘味感受性細胞はその応答がT1r3-Ggust、T1r3-Ggust以外、T1r3以外-Ggust、T1r3以外-Ggust以外の細胞内伝達経路の異なる4群があった。この結果は、T1r3-KOマウスで複数甘味受容体の存在が示唆された事実や、茸状乳頭味蕾でT1r3はGgustとそれ以外のG-タンパク質と結合パターンが分かれる事実と一致した。また、SNAP25の発現は認められず、記録した細胞はシナプスを持たないII型である可能性が高く、従来の報告と一致した。さらに、本年度はT1r3-,Ggust-,TRPM5-KOマウスの味覚感受性について鼓索、舌咽神経の応答で比較検索した。その結果、T1r3-KOマウスと比べ、Ggust-、TRPM5-KOは甘味応答の減少の点では類似していたが、舌咽神経苦味応答の減少は大きかった。しかし、TRPM5-KOマウスはGgust-KOマウスと比べ鼓索神経のキニーネ応答があまり減少しないという特徴があった。サブトラクション法による解析は方法に問題があり現在改善中である。
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