研究課題
基盤研究(A)
歯根破折は外傷によりあるいは無髄歯に発生することが多く、歯根破折歯の多くが抜歯に至るため臨床上重大な疾患である。無髄歯における歯根破折は、カリエス等の理由により歯髄処置を施された歯に発生するもので歯根破折の大部分を占めており、根管処置、築造材料、築造方法、補綴処置、咬合等の多岐にわたる要因によっておこると考えられる。その原因の究明、予防は高齢化社会のQOLを保つために重要である。歯根破折に関しては各研究領域にまたがる問題にも拘わらず、各研究領域独自で検討されてきたが、本研究課題においては各分担研究者が協力して歯根破折に関して基礎的および臨床的に検討するのは画期的である。今年度は研究期間初年度として、歯内療法領域では根管治療において根尖孔の太さ、根管充填の長さ、根管へ加圧を行う圧入長さについての関連をin vitroで検討した。その結果、88.8%の試料において垂直性歯根破折が発生し、実験系が垂直性破折を検討するのために有効であることが判明した。根尖孔が太いほど破折荷重は小さく、破折様相に関しては、根尖孔の太さ、根管充填の長さ、圧入長さの要因単独では影響は見られなかったが、根尖孔の太さと根管充填の長さの組み合わせに交互作用が認められた。保存修復領域では、レジンコーティング法による築造を行うことにより有意にコロナルリーケージが防止できることを報告した。歯冠補綴領域では、歯槽骨レベルを変化させたときに各種築造法の破壊強度の解析、ヒト口腔内で歯冠内に埋入可能な小型三次元咬合力計を開発し、機能時の咬合力の測定、築造法の違いが支台歯の挙動に与える影響を力学的に検討している。歯科理工領域では、ポストのテーパーと歯根破折についてin vitroで検討中である。さらに歯根破折歯の組成について詳細に検討を加えている。次年度以降、上述の結果を有機的に結びつけて研究を発展させていく予定である。
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