研究課題
歯根破折と根尖性歯周炎の鑑別診断は困難であるが、歯の保存か抜歯かという不可逆的な治療法が選択されるためその診断は極めて重要である。そこで、根尖性歯周炎を有する歯および垂直破折歯のデンタルX写真を用い、レントゲン透過像を抽出し、その像の形態をRadial SDおよび複雑度という2つの指標から評価した。その結果、透過像の形態に関して、根尖性歯周炎を有する歯と垂直歯根破折歯に有意な差があることが判明した。また、観察者間には相違はみられなかった。歯根破折はポストを装着された歯においては、ポストのテーパーに影響を受ける可能性が指摘されている。そこで、ヒト単根抜去歯を根管形成、根管充填後、1/10、1/20およびストレートのポスト孔を形成し、これらに適合したポスト、およびストレートのポストを装着し、歯軸方向に荷重をかけ、破折が生じたときの荷重および破折様相を観察した。その結果、歯根破折には残存歯質量の関与が大きく、大きなテーパーのポスト孔形成は歯根破折を容易に引き起こすことが示唆された。根管処置歯に対してレジンコーティング法を応用することでコロナルリーケージの抑制、接着による歯質保存的な修復と歯根破折の低下が期待される。本研究では、大臼歯に対してレジンコーティングを行い、コロナルリーケージの抑制効果について検討した。根管充填したヒト抜去大臼歯と2種のコーティング材(クリアフィルメガボンド・プロテクトライナーF、クラレメディカル:RZII、サンメディカル)を用いた。試料の染色液保管後の浸透長さを、コロナルリーケージスコアとした。その結果、コーティング群は、コーティングなしに比べて、著しくコロナルリーケージを抑制することがわかった。これによりレジンコーティング法が、大臼歯の根管処置歯におけるコロナルリーケージの抑制に有効であることがわかった。歯根破折の機序を解明する上で重要なことは負荷される咬合力を計測しそれが歯根内にどの様に応力分布をもたらすかである。現在までに大臼歯の髄腔内に埋入可能な小型咬合力センサを開発し咀嚼力を測定した。また構造解析プログラムを利用し種々の支台築造を行った非線形の単純臼歯モデルを作成しこれに咀嚼力を代入した結果、鋳造ポストおよび金属既製ポストとレジンを併用したものではポスト先端部から根尖にかけてファイバーポストとレジンを併用した場合は歯頚部に応力が集中することが明らかとなった。このことより、歯根破折が生じた場合、前者では歯根の縦破折の可能性が高く、後者では歯頚部での水平破折の可能性が高いことが力学的に明らかとなった。
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Dental Materials Journal 24(1)(in press)
歯科材料・器械 24(3)(in press)