研究概要 |
15年度に引き続き癌化過程における遺伝子発現プロファイルの変化を、マウス実験モデルおよびヒト白板症を用いて検索し、以下の結果が得られた。 1.マウス口腔粘膜の癌化過程のおける遺伝子発現プロファイルの発現変化 C57BL/6Jマウスに発癌剤であるBenzo【a】pyreneを最長12週間経口投与し、屠殺後舌を採取した。その後、凍結切片を作成し、レーザーマイクロダイゼクション法(PALM Micro Laser System)にて舌粘膜上皮細胞のみを採取し、total RNAを抽出してGeneChipシステムを用いて12,488個の遺伝子の発現変化を解析した。その結果、発癌剤処理によって未処理群と比較して2倍以上の発現増強が認められた遺伝子は63個、2分の1以下の発現減弱が認められた遺伝異は6個であった。発現が増強された遺伝子のうち特に特徴的な変化が見られた遺伝子は、SPRR2A, SPRR2E, SPRR2J, SPRR2B, SPRR3,SPRR1A, Transgulutaminase Eで、前4者は1週で著明に発現が増強され6週、12週では発現が減弱した。後3者は12週まで発現が継続して増強していた。これらのうちSPRR2AについてmRNAの発現レベルをRT-PCR法で解析したところ、GeneChipによる解析結果と一致していた。。 2.ヒト白版症症例と口腔扁平上皮癌における遺伝子発現プロファイルの比較 GeneChipシステムを用い、口腔白板症と口腔扁平上皮癌における遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析し、両者の遺伝子発現プロファイル(8,800個の遺伝子)を比較した。本研究に対して同意が得られ、本学ゲノム倫理委員会の指針にそって採取された組織よりtotal RNAを抽出し、ビオチン標識cDNAを合成後アレーにハイブリダイズして解析した。その結果白板症のすべての症例で発現増強が認められた遺伝子は5個で、そのうちLoricrin, Arginase 1,Histidine ammonia-lyaseの3つは口腔扁平上皮癌では発現が低下していた。
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