研究概要 |
1.発掘調査:昨年度発掘した3箇所の5m×5mの大きさのトレンチをさらに掘り進むとともに,新たに隣接する5m×5mのトレンチを発掘した。昨年出土した直径2mほどの窯については,入り口部の確認ができた。その窯の北側に接した緩やかにカーブを描く日干しレンガの壁にそって、たくさんの完形の土器が置かれているのが発見された。出土土器の修復・整理作業も行った。また,発掘区の周辺の地中レーダ探査も行った。 2.土壌分析:本年度は、2004年11月に行った現地調査データ(66地点)のとりまとめと採取した堆積砂の理化学分析を行い,アル・ザヤーン神殿をとりまく環墳の復元を試みた。堆積砂は貫入式硬度計の波形からPlaty, Root, Hard, Coarse, Sticky, Field, Wet, Dumpの8つに分類することができた。Root Sandでは固結度が弱いパイプ状の結核が発達し、過去に植生があったと考えられた。地中から水分が染み出していると考えられる地点(Wet Sand)では表土への塩析出と鉄集積層がみられた。廃砂地点(Dump Sand)および現在灌漑農業をおこなっていた地点(Field Sand)では特徴的な波形が認められた。採取試料のpH(H_2O)、電気伝導度、粒形組成、水抽出陽イオン、鉄の形態分析、ケイ素・アルミニウム含量、土壌有機物量等の結果と現地調査に基づく堆積砂の分類結果とは興味深い対応がみられた。各地点の特徴の比較によってアル・ザヤーン神殿の西部地域では,かつての植生や水があった環境から現在の乾燥した状態へ移行したことが推定された。 3.デジタルアーカイブ:昨年度に引き続き現在のアル・ザヤーン神殿の3次元デジタル記録を行い,建物の構造についてはほぼ記録できた。さらに,昨年度同様に,発掘過程の3次元デジタル記録も試みた。
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