研究課題
基盤研究(A)
1.海底洞窟の軟体動物や甲殻類の分類学的研究をおこない、アミ類の2新種、コハクカノコ科巻貝の1新属、3新種を報告した。さらに海底洞窟産コハクカノコ科巻貝4新属、4新種を見いだし、それらについて論文の投稿字備中である。2.海底洞窟は捕食者が僅かで、それは中生代中頃の浅海の生態系との共通点といえる。本研究では両環境を比較るため、穿孔捕食するタマガイ科巻貝の捕食史を再検討し、同科は白亜紀末に出現し、貝類に対する穿孔捕食は白亜紀末から増えたことを明らかにした。一方宮古島と伊江島の2カ所の海底洞窟の貝類殻の穿孔と破砕捕食痕の頻度を5%以下であり、その頻度はこれまでに知られている白亜紀後期の貝類化石群に見られる頻度にほぼ等しいことを明らかにした(論文準備中)。3.フィリピンの遠くはなれたつのアンキアリン洞窟からのコハクカノコ科巻貝の1新種のmtDNAのCOI遣伝子塩配列を用い、アンキアライン洞窟の動物として初の個体群解析を行った。その結果、2島の集団ひとつの氾生殖個群であり、孵化した幼生が川を下り、海での浮遊幼生期をおくったのち河口で着底・変態、幼貝が遡上する両側回遊という生活環が、アンキアライン洞窟進出にあたっての前適応であることを指摘した。4.海底洞窟産コハクカノコ科貝類を検討し、これらの種がインド・太平洋島嶼に極めて広く分布することを明らかにした。種多様性は東南アジアでで最も高く、そこから離れるに従い種数の低減し、大西洋では見つかっていない。最古の化石はパリ盆地の漸新世の海底洞窟堆積層で、第四紀には太平洋の各地で発見されている。一般に、海底洞窟棲生物は分散能力が低く、プレートの移動によってのみ移動可能であると考えられているが、これは不十分なサンプリングによるもので、コハクカノコ科貝類の時空分布は浅海サンゴ礁域の明所の生物の分布様式と全く同じ特徴を示すことが明らかとなった。
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