研究概要 |
永久凍土地帯のカラマツ成熟林に弱度と強度の火入れ処理を行い、地表火による林床の攪乱う強度が樹冠部の光合成・蒸散速度に与える短期的な影響を明らかにすることを目的とした。スパスカヤパッド実験林内に昨年設置した底面8m×8m、高さ18mのジャングルジムタワーで7月に火入れ処理を実施した。林床を灯油バーナーで1.6m×1.6m区画ごとに一定時間燃やした。火入れ処理は2回行い、初回は1区画3分間、下層植生とリター表面を焼失させる程度の弱度火入れ、2回目はカラマツ周囲を重点的に1区画につき最大12分の強度の火入れ処理を行った。リターの焼失量は燃焼前に埋設した金尺を用いて測定した。火入れ処理時の地温(地表面からの深さ0cm,5cm,10cm,15cm)を測定した。光合成・蒸散速度の測定は、火入れ処理直前、直後およびほぼ1週間後に実施した。測定条件は光強度1500μmol m^<-2>s^<-1>、CO_2濃度360ppm、チャンバー内温度を午前は20℃、午後は25℃または30℃に、葉面飽差を午前は1kPa、午後は3kPaに制御した。光合成速度を測定した供試葉の水ポテンシャルを、サイクロメータを用いて光合成速度測定終了後直ちに測定した。初回の火入れ処理により燃焼した有機物層の厚さは平均0.9cmであり下層植生とリター層表面が焼失した。2回目の火入れ処理では、リター層と腐植層の一部を含む平均1.6cmを焼失した。深度5cmの地温は、1回目の火入れ処理で9℃から26℃に上昇した。2回目では、深度5cmの地温が11℃から70℃まで上昇し、深度10cmの地温が6℃から36℃まで上昇した。2回の火入れ処理にかかわらず、火入れ処理区の光合成速度は概ね6μmol m^<-2>s^<-1>から10μmol m^<-2>s^<-1>で一定であった。隣接する対照区のカラマツでは光合成速度の経時な日中低下がみられたが、火入れ処理区における光合成速度の低下は認められず、対照区に比べて有意に大きかった(t-test, p<0.05)。これは土壌の乾燥状態の違いが反映したものと考えられる。
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