研究概要 |
今年度も昨年度と同様に炭化植物試料を中心に、中国科学院・遺伝発生生物学研究所に所属する中国側共同研究者と共に古代栽培植物DNAの分析をおこなった。これまでに収集・分析した炭化米試料に加えて、約5000年〜8000年前の中国・河南省の遺跡から出土した炭化米試料のサンプリングを重点的に実施した。また、日本の稲作の歴史を知る上で、これまでに収集した約2000年前の日本の弥生時代の遺跡出土の炭化米試料ばかりでなく、中世の遺跡(福島県および和歌山県)から出土した炭化米試料の収集もおこなった。これは、日本の稲作の歴史を知るためには、日本への稲作の伝播を知る時空間的に知る必要があるのが理由である。昨年と同様に、従来これら炭化植物試料が炭化米であろうとする根拠はその形態的特徴から判断されていたので、そこでまず種の確認をDNAからおこなうこととした。すなわち、これら古代栽培炭化植物試料からDNAを抽出、続いて、精製したDNAをテンプレートとして,PCR法を用いてDNAの増幅を試みた。DNA増幅をおこなった領域は,既に複数の植物種でその塩基配列情報が明らかにされ、またそれら植物種間に高度の多様性を有し,種の同定も含めて本研究の目的に適した葉緑体DNAのPS-ID領域とし、昨年度に改良を加えた実験条件にて、DNA増幅と直接法による塩基配列の決定に成功し、間違いなくコメ由来のDNAであることが確かめられた。古代栽培イネの遺伝的多様性を明らかにするために、上述の実験分析データの蓄積を重点的に進めている。
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