研究課題/領域番号 |
15255009
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中橋 孝博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (20108723)
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研究分担者 |
北川 賀一 長崎大学, 歯学部, 助手 (70186237)
篠田 謙一 国立科学博物館, 人類研究部, 室長 (30131923)
分部 哲秋 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (50124847)
宮本 一夫 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (60174207)
甲元 真之 熊本大学, 文学部, 教授 (70072717)
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キーワード | 国際研究者交流 / 中国中原地域 / 渡来系弥生人 / 日本人の起源 / 古人骨 / 自然人類学 |
研究概要 |
日本人の起源問題において懸案となっている渡来系弥生人の源郷を明らかにすることを目的として、中国・中原地域から出土した夏・商〜前漢時代の古人骨調査を実施した。当該古人骨を大量に保有している中国河南省文物考古研究所との事前交渉のため、まず8月に同研究所を訪問し、協議書をまとめた上で、秋の現地調査の具体的な打ち合わせを行った。その研究計画に基づいて、10月9日〜31日に同研究所付属の新鄭工作所を訪問し、約3週間に渡って古人骨調査を実施した。資料数が多いため当初は現地作業員を雇用して人骨整理作業を実施する予定であったが、人骨整理にはある程度の熟練が必要なため、その作業に手慣れた大学院生(4名)を伴って、研究分担者によるデータ採取の準備作業に当たらせることとした。本年度はまず同研究所保管人骨の内もっとも資料数の多い周庄遺跡出土人骨(春秋戦国〜漢代、約400体)を主たる作業対象として選択し、計112体についての計測、観察、写真撮影を終えた。その他、目下、同研究所が発掘している興弘遺跡(春秋戦国時代)の資料(約80体程度になる見込み)についても、保存良好で考古学的情報も豊富であることから研究対象に加え、計35体について整理とデータ採取を終えた。またこうした人類学的調査に平行して、遺跡や関連の時代、地域に関する考古学的情報の収集も行った。さらに、平成16年2月20日〜3月2日の日程で、中国側共同研究者である韓国河、焚温泉両氏を招聘し、九州大学において合同研究会を実施(同研究会には、北京社会科学院考古研究所の許宏氏も参加)したのち、京都大学、奈良文化財研究所、東京大学、東京国立博物館などを訪問して、日本側の考古・人類学情報の収集作業を行った。今年度の調査によって明らかになった諸事実の中で注目される点として、まず周庄集団が、顔面の扁平性、高顔性、高身長、及び四肢プロポーションにおいて基本的に北部九州弥生人に共通する特徴を持つことが確認されたことが上げられる。この集団の全容解明と詳しい比較分析にはまだ相当の時日を要するが、中国の古人類研究におけるこれまでの時代的、地域的な空白の一つが本研究によって埋められる見込みが立ったと言えよう。また、興弘遺跡出土人骨では、そうした形態的特長に加え、特にその性比が女性に大きく傾き、しかも未成人骨が約30%余りを占めると言う、中国出土の古人骨集団としては殆ど前例のない状況が浮かんできた。これまで中国の人類学研究では殆どが形態学的研究に終始して、古人口学や古病理学などの分野の研究が大きく立ち遅れており、今回の調査によって、埋葬習俗などを含む当時の社会背景の理解にも寄与し得る知見の得られる可能性が示された。
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