研究課題
昨年度までに収集した計測データに基づき、ジャワ原人頭骨化石の形態変異に関する解析を行った。過去5年をかけて構築してきたこのデータセットは、未発表標本も含む既存の大多数の化石について統一された定義に基づいて収集したものである。このデータセットは、従来のデータの質と量の問題点をかなり解決し、ジャワ原人化石の形態について、多くの信頼性の高い情報をもたらすと期待される。解析の結果として、ジャワ原人頭骨の時代変化について、サイズの増大や前頭部の幅拡大など一部の先行研究による知見を確認し、一方で側頭骨や頭蓋基底部のユニークな変化など、これまで知られていなかった側面について例証することができた。また、年代の古いサンギランと若いガンドンの化石群がそれぞれ特徴的な形態を示すのに対し、サンブンマチャンの化石群は年代不詳ながら形態的にはサンギランとガンドンの中間的傾向を示した。このことは、ジャワ原人は前期〜後期更新世を通じた単一系統のグループで、アジア大陸の原人集団とはあまり関係を持たずに、連続的に進化したことを示唆する。その他、ドイツとオランダの研究所へ赴き、最古のジャワ原人の頭骨化石の研究を実施するための準備を始めた。成果は日本人類学会・古人類学協会・アメリカ形質人類学会にて発表した。計測値の解析結果をまとめた論文を現在投稿中であり、最古のジャワ原人頭骨についての知見は、論文集の一環として出版される予定である。
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