研究概要 |
ムギ作を基盤とした農業生態系において環境・人・作物・雑草の間に起こる相互関係は,作物・近縁野生種・随伴雑草の適応進化の要因を解明する上で重要である.計画初年度の平成15年度は,コムギ近縁野生種の多様な種内分化が見られるトルコ南部とギリシア,および普通系コムギの起源地でありその祖先野生種の1つであるタルホコムギの遺伝的多様性の中心であるイラン北部において現地調査を行った.1.トルコ南部:(1)コムギ近縁野生種の登熟期にあたる7月11日から7月15日の間,チュクロバ大学と共同で現地調査を行った.その結果,エギロプス属9種122サンプルを含む126サンプルの種子を収集しチュクロバ大学に保存した.この中には,Aegilops neglectaとAe.biuncialisの固有の変種が含まれる.(2)コムギ近縁野生種の発芽・栄養生長期にあたる12月21日から26日の間,夏に調査した自生地においてエギロプス属の種子発芽率を調査した結果,同一穂内の小花によって種子休眠の程度が異なることが示唆された.2.イラン北部:7月23日から8月4日の間,カスピ海南岸地域,アルボルツ山脈南麓およびザグロス山脈北部において,イラン国立植物ジーンバンクと共同で現地調査を行った.その結果,エギロプス属7種を中心に合計189の種子サンプルと47のさく葉標本を収集しイラン国立植物ジーンバンクに保存した.おもな成果:(1)タルホコムギの種内分類群の地理的分布と生態的分布が明らかとなった(日本育種学会第105回講演会で発表).(2)コムギ畑に随伴する雑草ライムギに小穂脱落性と非脱落性の個体が畑により様々な割合で混入することが明らかとなった.3.ギリシア:8月14日から17日の間予備調査を行った.4.一次報告書:15年度調査の概要を「A preliminary report of 'Fukui Prefectural University agro-ecological exploration in southwest Eurasia in 2003 (FASWE03)'」として公表した.
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