研究課題
遺伝子資源の宝庫であるアマゾン川流域および植物が独自の進化を遂げてきたギニア高地における本植物(おもに被子植物)の木部形態形成に関し、材利用の観点から材質を左右する因子に焦点をあて、環境適応と遺伝学的分類の両面から知見を得る。本年度は、9月にマトグロッソ州北部のコトリグアス周辺の熱帯雨林を調査した。今回は、ブラジル側研究者の綿密な準備により、貴重な処女林より伐採直後の数種の熱帯産材および葉を日本に持ち出すことに成功した。現在、これらの組織解剖学的性質、理化学的性質について調べている。これまでに、材比重、抽出成分量、シリンギル・グアイアシルリグニンの比率等について解析中である。これら地域における現地調査(日本ブラジル合同チーム)を通して、多種多様な種の木部形態形成を実測値に基ずく情報(リグニン組成比、成長応力解放ひずみ等)と画像に基ずく情報(樹形、木材組織観察等)とから、両者の相関関係をみいだし、これにデータベース化することにより多種多様な種を分類・序列化していきたい。さらに、特徴的な性質を示す種の遺伝子解析をおこない、進化過程を明らかにしていく。調査予定地域(数カ所)は、生育環境が著しく異なっているので、環境適応との観点から木部機能分化についても検討していく。3月に予定していた現地調査は、異常気象のため平成17年5月に延期することとなった。試料の調達において、若干の遅れが認められるものの、解析手法の開拓等は順調に推移している。