研究概要 |
研究目的 チェルノブイリ原子力発電所事故に伴う放射線被ばくによる健康影響をはじめとし、放射能汚染による地域農産物、畜産物等の摂取制限、ソ連邦崩壊にともなう経済的影響による栄養摂取状況の悪化、さらに産業廃棄物汚染、地理学的元素分布に由来する風土病等の問題を総合的に調査・判断をするために、特に"住民の元素摂取量"に関連した健康影響因子に関して調査・解明を現地研究者と共同で行う。成果は汚染地域に住む住民のみならず人類(日本人)に有効に役立てる。 本年度の研究実施内容 平成16年9月にキエフ、チエルノブイリ地域に出張し、サンプリング地域の選定、一部サンプリングを実施した。残りのサンプリングは現地の共同研究者が実施(食事試料買い上げ)。放射化学研究室にて前処理、減容化(乾燥、灰化等)してザモスチアン氏が持参する。現在、化学分析を急いでいる。試料はマイクロ・ウエーブ法による湿式灰化後、微量元素(I,U,Th,Co,Cs,Sr,Rb,Ba,Tl,Bi等)並びに主要、中間元素(Na,K,Ca,Mg,P,Fe,Mh,Cu,Zn等)をICP-MS(誘導結合プラズマ・質量分析法)ないしICP-AES(誘導結合プラズマ・発光分光法)を使用して定量している。この研究の性格から今年度はまだデータの蓄積の時期であり、新たな知見は得られていないが、現時点において約150試料の分析を完了した。この分析等についてはポスドクの雇用により能率よく進んでいる。臭素摂取量の一部結果及びチエルノブイリ事故汚染地域の一つであるベラルーシの結果は本年度に日本微量元素学会誌の論文とした。ヨウ素摂取に関する中間報告論文は米国のHealth Physics誌に近々受理される。また、分析済みのデータについて夏の日本微量元素学会において発表する。
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