研究課題/領域番号 |
15256002
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
田島 和雄 愛知県がんセンター, 疫学・予防部, 部長 (30150212)
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研究分担者 |
園田 俊郎 鹿児島大学, 地域共同研究センター, 客員教授 (40036463)
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50227013)
若井 建志 愛知県がんセンター, 疫学・予防部, 主任研究員 (50270989)
妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
千葉 仁志 北海道大学, 医学部, 講師 (70197622)
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キーワード | モンゴロイド / HTLV-I / HBV / HCV / サーメ族 / チベット族 / 民族疫学 |
研究概要 |
世界の諸民族におけるヒト白血病ウイルス(HTLV-I)の流行分布から環太平洋地域のモンゴロイド集団の人類遺伝学的な特性を把握するため、今年度は調査対象を中央アジア、および極北地域に定めた。先ず、ネパール高地(標高4,000m)に散在しているチベット族(シェルパ族)を対象に調査を実施した。国家衛生調査委員会の許可を得たのち、現地で研究協力に対する承諾の得られた103名から採血し、HTLV-I、およびB型、C型肝炎ウイルスの感染状況を検索した。HTLV-IとHCVの抗体は全員陰性で感染者を認めなかった。HBV抗原については2例の陽性者を認め、二年前の中国チベット族の調査による2割陽性と比較して低率だった。 次に、ノルウェーのオスロ大学の共同研究者らと協力体制を組み、極北地域のサーメ族を対象にHTLV-Iの流行状況について検索した。検索対象として、約25年前にノルウェー極北地域で慢性疾患調査のために採取され、現在まで保存されてきた約2,000名分の血清の中から、サーメ人400名とその比較群として非サーメ人380名をランダムに選んだ。倫理的対応としては、ノルウェーの医学倫理審査委員会、血清保存委員会、国立衛生研究所などの許可を得たのち、新聞紙上に地元住民の本研究に対する是非を問いかけ、サーメ族の人たちから間接的な承諾を得た。全検体を日本に持ち込み、HTLV-Iの抗体についてPA法(凝集法)、およびWB法により検索したが全例陰性だった。今回の調査では中央アジアのチベット族、および極北地域のサーメ族ともにHTLV-Iの流行の軌跡を観察しなかった。 来年度はアジア極北地域の中で周囲と最も隔離された環境下で居住している北西ロシアのエスキモーを対象に野外調査を計画しており、これらのウイルス学的、免疫遺伝学的情報を包括し、世界のモンゴロイド集団の移動軌跡に関する作業仮設を実証していく。
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