研究概要 |
1.冠動脈攣縮の動物モデル(ブタ)を作成し、同モデルにおいて、冠動脈攣縮の主因が、血管平滑筋のCa感受性を亢進させる分子であるRho-kinaseの発現・活性の増加にあることを明らかにした。 2.ヒトの摘出内胸動脈においても、動脈硬化が進展するのにつれて、Rho-kinase依存性に血管平滑筋の収縮が亢進することを明らかにした。 3.冠攣縮性狭心症患者において検討したところ、ヒトの冠動脈攣縮もRho-kinase阻害薬により抑制されることを明らかにし、Rho-kinaseを介するシグナル伝達経路が、ヒトの冠動脈攣縮にも重要な役割を果たしていることを明らかにした。 4.従来血管平滑筋の収縮に関与するとされてきたprotein kinase C(PKC)とRho-kinaseの関係について検討したところ、PKCの下流にRho-kinaseが位置していることを明らかにした。 5.ヒトのRho-kinaseのcatalytic domainに、新規のmissense mutationであるG930T(K310N)を見出した。 6.ヨーロッパの大規模臨床試験グループであるENCORE Studyグループとの共同研究において、上記のRho-kinaseのmutationに加えて、ACE I/D,angiotensinogen C704T,AT1 receptor A1166C,eNOS C-786Tの4種類のpolymorphismを追加して、日本人(n=215)とCaucasian(n=318)の比較を行った。その結果、まず、日本人の集団の中で、冠動脈攣縮誘発テスト陽性群は、陰性群や正常集団よりもT930 alleleの頻度が有意に高かった(P=0.008)。重要なことに、T930 alleleはCaucacianには1例も見出されなかった。他の4種類のpolymorphismには、差は認めなかった。また、このT930 alleleは、Rho-kinaseの活性増加を伴うことを、培養細胞を用いた研究により確認した。
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