研究概要 |
バーチャルリアリティの分野ではコミュニケーションの臨場感を高めるために五感情報についての研究が盛んに行われており,触覚表現のためのアルゴリズムや触覚提示ディスプレイが開発されてきた.本研究は,実物体の触覚を表現するために必要な「やわらかさ」の情報を計測するカメラの実現を目的としている.「やわらかさ」を表現する物理量として,昨年度は物体の「変位」と触ったときの「反力」を測定し,静特性に相当する「静的なやわらかさ」の情報を取得した.本年度は物体にインパルス力を作用させた直後の「変位」の時間変化を測定することで,「動的なやわらかさ」の情報を取得する. まず,ゼリー状の材質を持つ直方体を対象として,様々な位置角度から「動的なやわらかさ」のデータを取得した.この実験で取得したデータから,物体を微小変形において線形弾性変形すると仮定して,物体固有の時間軸方向に変化する逆剛性マトリクスを求めた.力覚情報の再生時には,位置を補間し,たたみ込み積分をすることで既存の力覚ディスプレイによって反力を提示できる.そこで次に,力覚情報の再生実験を行った.この実験から,従来のバネマス・FEM(連続体力学)・LEMモデルと比べ,安定かつ高速な計算処理が可能であることがわかった. これにより,比較的に単純な形状の対象物の「動的なやわらかさ」を計測して情報を記録し,それを基にバーチャルな触覚を実現することができた.任意の操作をしたときの"ぶよぶよとした変形"を力覚および視覚ディスプレイによって確認できる.
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