研究概要 |
本研究では,ユーザフレンドリな音声対話システムの実現を目指し,人間による対話事例を活用する新たな対話処理方式の開発を目的とする. 初年度は,事例に基づく対話技術の基礎的研究として,事例データベースの構築,ユーザ発話のロバスト理解,及び,大規模対話データを利用した車内対話制御方式を実施した. (1)対話事例データベースの構築と分析 データベースの構築では,名古屋大学統合音響情報研究拠点の実走行車内音声対話コーパスのうち,対人間,対人間代行システム,対音声対話システムの3つの形態で遂行された被験者との計100時間分の対話音声とその文字化データを使用した.データベース化にあたり,コーパスを構成するすべての発話に言語分析メタデータ(形態素分析データ,構文分析データ,意図分析データ)付与を人手で実施した. (2)統計データに基づく音声言語処理手法の開発 情報検索対話システムが,統計情報を用いてユーザの発話を理解する方式について検討した.音声対話コーパスの中から,入力された発話文に最も類似した文を選び,その文に付与された意図を入力発話文の意図とするというアイデアに基づいている.プロトタイプシステムを実装し,言語データベースを用いた発話意図推定実験による精度評価を実施した. (3)事例を用いた対話制御法の開発 システムが,対話事例データベースを用いて車内対話を制御する仕組みについて研究した.発話制御では,現在の対話状況に最も類似した状況を対話事例の中から取り出し,その状況のもとで発声された発話文を活用してシステム発話を決定した.対話状況としては,ユーザの発話及びシステム内外の状態(保持している情報や車外状況など)を考慮する必要があり,それらの情報を統合した発話生成モデルを構築した.
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