研究概要 |
道路交通標識を実時間で認識するシステムのプロトタイプを構成し、実装して評価した。車載ビデオカメラで撮影した道路の動画像をPCに取り込み、PC内でオフライン処理を行いながらシステムを構築した。本年度は、赤い円形の標識9種類の認識にターゲットを絞って開発を行った。今年度の成果は、画質の悪い動画像から標識内部の記号を抽出するために、人の視覚系に学んだ反対色フィルターが極めて有効であることを示したことである。システムの概要は以下の通りである。 RGB表色系で記録された動画像の色信号を、HSB表色系に変換し、色相で赤い領域を切り出した。その領域の輪郭から円の方程式のパラメータを推定し、切り出された領域の輪郭と円の方程式の誤差が小さな領域を、赤い円形の道路交通標識候補として抽出した。標識を識別するためには、円の内部の記号部分を抽出する必要がある。そのために、人の視覚系に学んだ反対色フィルターを構成し、フィルター出力に対する判別分析法による2値化によって極めて有効に記号部分を切り出すことに成功した。抽出された記号部分の構造的特徴を抽出し、識別木を構成して標識を認識した。 システムをPentium4,2.8GHzのPCに実装した。720x480画素の動画像から、3つの赤い円形領域を切り出すのに要した時間は約120msecである。標識内の記号の抽出と認識は約10msecであり、標識1つの認識は約40msecで終了する。30分の道路画像から正しく切り出すことができた赤い円形領域の割合は、約76%であった。このうち、正しく認識できた標識の割合は、99%であった。切り出し率が低い原因は、逆光によるものであることが分かっているので、次年度は対象標識を増やすことと、逆光対策に力を入れる予定である。
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