本研究の目的は、自動車の安全運転支援のために、車載ビデオカメラを用いて道路交通標識を実時間で検出し、識別結果を運転者に提示できるシステムを構築するための基盤技術を確立することにあった。本研究期間内では、赤い円環で縁取られた円形の標識のうち、速度制限30km、40km、50km、駐車禁止、駐停車禁止、追い越し禁止の6種の標識を対象とした。実際に道路上で観測される赤い円形の標識のほとんどは、これらの標識である。 赤い対象の識別は、ビデオカメラ出力から得られたR-G-B表色系からH-S-V表色系に変換し、色相を手がかりに切り出した。赤い円形の対象については、切り出された赤い対象の最外部の輪郭に円の方程式を当てはめて切り出した。木の枝による隠れ等に対処するため、輪郭系列に状態を導入し、部分系列による円検出を行うことで、一部が隠れて見えない標識も認識可能とした。標識内部の記号の切り出しは、人の視覚系に見られる赤-緑型反対色受容野を模した空間フィルタと判別分析法を用いて行った。記号の認識は、交差特徴など簡便な構造的特徴を用いた決定木で行っている。約2時間の道路画像を用いて認識実験を行った結果、認識率が97%(正答率がほぼ100%、リジェクト率が約3%)の結果が得られている。処理時間は、2.8GHzのPentiumで10フレーム/秒の処理速度が得られている。 現在、異なる条件で撮影した道路画像を用いて汎化性能を検証中である。また、見落としてたときに大きな事故につながる可能性がある「止まれ」の認識アルゴリズムを開発中である。
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