研究概要 |
テレロボティクスの分野では,マスタスレーブを使った高臨場感遠隔操作として力覚をフィードバックする力帰還型のバイラテラル制御系の構築が積極的に行われている.今後,より多自由度で高度な作業へと難易度を高めながら,技術の向上を図ることが必要となる.人の技量を遠隔操作でも活かすためには,触覚情報に基づき遠隔臨場感を高める必要がある.物体との接触の初期に,滑りやすいかどうか(摩擦係数)が知覚される.さらに,持ち上げ動作に移行した後,状況によっては滑りが予知される.両者とも,指と物体表面との間で局所滑りが生じており,これを感度よく知覚している.摩擦係数は,物体との摩擦に依存する皮膚の横伸びあるいはせん断から特定でき,皮膚内部のひずみ分布パターンから検出できる. マイスナー小体のコイル状軸索構造は,コイル全体の伸縮/せん断変形をコイル線素表面のせん断/伸縮変形に変換する役割を担っている.そこで,コイルばねの構造に着目した圧縮・せん断センサの解析および実験を行った.コイルばねに圧縮およびせん断が作用した際に素線に生じるモーメントおよび応力から,ねじり成分と曲げ成分の分離方式を新たに提案した.また,ひずみゲージの貼付に関する考察を行い,校正方法を考案した.なお,3次元有限要素シミュレーションにおいて,基本的な挙動を確認し,実験により提案手法の有効性を示した.これにより,より高性能な触覚センサの開発が可能となる. 本研究では,触覚センサ内蔵ソフトフィンガと触覚ディスプレイを独自開発し,遠隔臨場感多指ハンドシステムを構築した.操作対象の硬さ,柔らかさなどに加え,滑りやすいかなどの触感が得られれば,将来さまざまな適応的な操作が可能となる.現在,五感通信が将来技術として話題になっており,本研究成果は,触覚情報の計測・伝送・提示の技術開発に寄与し得ると考えられる.
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