研究課題
音の分節・統合に関連する可能性のある振幅変調(AM)音の処理機構について、モルモット聴覚皮質活動を光学的に計測し、解析した。刺激には、純音を変調周波数(fm)4〜128Hzで変調したAM音(長さ1秒)を用いた。AM音に対する活動は、音の開始時に現れるon応答、その後に続く変調に同期した活動(追随応答)、および音の終止時に現れるoff応答からなる。on応答はfm周波数にはほとんど依存せず、AI(一次聴覚野)、DC(後背側野)、P(後側野)で純音と比較して大きく、VA(前腹側野)では同じ、VM(内腹側野)では小さかった。追随応答は、周波数分析の結果、DCとPでは32Hz(fm)以上には追随しないのに対して、AIとVAでは32-64Hzに追随した。off応答は、すべての領域で純音に対する応答よりも大きく、さらに、DCとPでの応答はAIとVAよりも大きかった。またDCとPでは、fm周波数を高くすると応答は有意に大きくなった。ヒトの聴覚野では、パルス間隔が長い場合にはパルス毎に現れるが、パルス間隔が短くなるとパルス列の開始時と終止時にのみ現れるようになることが報告されている。今回の結果はこの報告と一致する。AM音への追随性が悪くなることは長い時間窓を持つということに対応し、追随性が領域毎に異なることは、領域毎に処理の時間窓が異なることを示す。長い時間窓をもつということは、その時間内での時間分解能が下がり、周波数分解能が上がることを意味している。これは、その時間内の音を、あるスペクトルをもつ1つの音として処理することを意味する。off応答は、このような音を処理する際に、音の終わりを検知する役割を果たしている可能性があると考えられる。また、このような処理が聴覚皮質の後方の領域で行われることが本研究の結果から示唆された。
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