研究概要 |
本研究の目的は、擬音語を用いた新しい音の感性的評価手法を確立することである。そのためには、各種の環境音や合成音の音響的特徴と擬音語表現及び聴取印象の相互関係、擬音語から想起される音の音響的特徴を明らかにする必要がある。 今年度は、さまざまな音響的特徴がどのような擬音語で表現されるのか、また、音の音響的特徴がもたらす主観的印象とこれに対応する擬音語表現を明らかにするための実験を行った。被験者にさまざまな環境音(36個)を刺激として呈示し、これらの音を擬音語で表現する自由記述実験と,これらの音に対する主観的印象を「快い-不快な」「鈍い-鋭い」といった13個の形容詞対尺度を用い、SD(Semantic Differential)法によって測定する実験を行った。 実験で得られた擬音語回答は調音位置、調音様式、母音といった音声学的パラメータで符号化し,被験者全員の回答から、各刺激に対する各音声学的パラメータの度数を求めた。各パラメータの度数の類似性に基づいたクラスタ分析により刺激を分類した結果、5つのクラスタに分類され、時間構造や周波数構造の類似した刺激が同じクラスタに分類された。例えば、母音の中で第2フォルマント周波数が最も高い/i/の度数が多いクラスタでは、高周波数帯域に主要な成分を持つ音が多く見られた。印象評価実験の結果には因子分析が適用され、情緒因子・協和・金属性因子、迫力因子と解釈できる3因子解が得られた。因子得点と擬音語中の音声学的パラメータの相関分析より、高周波数帯域に主要な成分を持ち、金属的な印象が強い音には母音/i/が多用される、などの幾つかの対応が見られた。また、明らかになった音の音響的特徴、主観的印象,擬音語の特徴の3者の関連を検証するため、合成音を用いた同様の検証実験を行った結果、環境音を用いた実験で得られた対応関係が確認された。
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